氷塔哀歌

そこは天高く聳え立つ大きな大きな塔だった。

氷塔哀歌1

その世界には塔が幾つか聳えていて
よくある。それぞれの何かを司った楔
といったところだろうか。

これ以上悪くならないように。

何を以て悪いというのだろう。

というか、
悪くなるのを前提に作られたものなのだろうか?

それとも、悪いことをしている自覚かあるからの話なのだろうか。

いつもいつも、
胸の奥が燻っている。

氷塔哀歌2

自分は、この塔の支配者だ。
と、形式上でも言わなければやっていられない。

この塔は氷の塔。

普通は水とかなんじゃないかと思うのだけれども、
水の塔は別にあるので、そこより寒い場所にあるここは氷の塔なのだ。

だったら水の塔が管理すればいいのに。
と、いつもいつも思う。

塔はその国の管轄だ。
その国の象徴。その国の柱。その国のイケニエ

塔のある国は、塔の魔力の影響力で暮らしている。
民っぽい言い方をすれば、
塔の御加護で日々平穏に暮らしております。
ってやつだ。

自分は、この塔の支配者。
その国の柱
塔の魔力の源…つまり、イケニエ

氷塔哀歌3

分かっているよ。
この塔がなけれは国が乱れることを!

分かっているよ!

この沢山の柱が、隣接する国々の抑止力になっていることを!

そうさ!自分はこの塔の魔力。
この塔の影響を及ぶ範囲なら、ここにいながらに見ることが出来る。
そういう風に改造されたんだから。

それはどの塔の支配者も同じ。

国境線でのいざこざ、自分たちが知らないと思っているの!?

争い事を冷や冷やした目で見ながら、隣国の塔の主と会話する。

「またですか」
「またなんですよ」

あちらこちらでそんな会話をしながら

これ以上争ってくれないよう、冷や冷やしていた。

氷塔哀歌4

もちろん、嬉しいこともあるよ。

子供が生まれるとき、結婚式なんかだって嬉しいことだ。

そういうときは特にサービスするね!

魔力を大放出して祝福を!

自分に同調してか、塔全体が謡うんだ。

♪ハローハロー♪みんな元気かい?
こういう時の笑顔は、無理矢理じゃなくていいね♪

もっとも、塔は喋らないから、自分の声は届かないけど!

氷塔哀歌5

ああしかし、
とうとうこの日が来てしまった。
水の塔のヤツや、風の塔のヤツと話していたんだ。
中央の王が変わったらしいって。

中央は特に塔を持たない商業都市だ。
だから、いろんなものがいっぱいになっている。らしい
って聞いていた。

もちろん、全ての会話は「らしい」がつく。
なにせ全員、そこに行けないのだから。

氷塔哀歌6

自分の隣は、水のやつと、風のやつ。

そいつらの隣はよく知らない。

境界のいざこざが増えてきた。今までよりも、ちょっと激しい。
国内でも、
なんでもない場所での笑顔が減った。

不安そうな顔をしている。

景気づけに謡おうか?

自分が魔力を大盤振る舞いにして歌い上げる。

今までは、
それが声にならなくても、みんなが笑顔になった。
でも今は、それが不安を煽るらしい。

自分の声は、塔に反響して、

オオーン、オオーン…

と響くのだ。

以前は笑顔で返されたそれは、
歌が響く度に、人々は眉をひそめた。

…ここに閉じ込められて以来、しばらくぶりに泣いた。

氷塔哀歌7

ある日、どこかの塔が落ちた。

塔は世界の楔だ。

見えなくても、繋がっていなくても、それくらいは分かる。

バランスを欠いていく世界
走り回る人たち。

それを見守るしか出来ない。自分という存在

重々しい軍靴の足音は、すぐそこまで来ていた。

氷塔哀歌8

家々が燃えている。

ねえ、誰が世界をこんなにしてしまったの?

人が蟻の子のように散り散りに逃げ惑う

どうしてこんな風に成ってしまったの?

逃げ惑う蟻の子を、靴で踏みつけるように命が散っていく

そりゃあね。自分は、最初にこの塔に括り付けられたとき、恨んだし、悲しんだよ。

塔の扉かこじ開けられる

でもね、みんなの祈りや、笑顔を見ていたらね。まあいっかなって、なったんだよ…

金属の足音は階段を登り、長く眠った姿の自分の元に…



その後の事は自分は知らない。

ただ、最後の最後の時まで、自分はみんなに謡っていたんだ。


氷塔哀歌



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